アップルがiTunesを初めてリリースした2000年、この音楽ソフトを的確なターゲットに響かせるための同社のキャッチコピーは「RIP、 MIX、BURN(借りてきて、混ぜっこして、焼こうよ)」だった。その当時、リーガル的にもボーダーチックなこの言葉にかなりの衝撃を受けた事をはっきり覚えている。それ以降、三つの単語を羅列して一つのstyleを表現する広告が流行りまくったのは周知の事実。だが、そのキャッチコピーが世に出る4年以上も前に、知ってか知らずかこのstyleで前代未聞の一風変わったショーを敢行し、回を重ねる毎にパワーアップしていった二人が存在していた。その「スライドショー」と名付けられた独特な催しは、”MJ”ことみうらじゅんが街に氾濫する「どうかしているモノ」をカメラで撮影し、スライドにして大衆の面前で大写しにさらし出し、それを見た”SI”こといとうせいこうが傍若無人なツッコミを入れるだけという一見単純なショーは、なんとシリーズ合計10回、12年目を迎え、今年はなんと全国ツアーという暴挙に出たのである。
「撮って、映して、ツッコむ」。まさにこの三つの単語の工程をひたすら実践し続けてきたロックンロール・スライダーズ(みうらじゅん&いとうせいこう)のお二人に今回の「スライドショー10 JAPN TOUR 2007」を終えた直後の総括と12年間の思い出を振り返りながら、彼らにとっての持続力についてインタビューしてみた。
大半10時半か、11時に寝むっちゃってるね。(みうら)
いい加減にしてくださいよ、俺はもう眠れないんだからさ。(いとう)
— 今回スライドショー初の全国ツアーという事でしたが、まずはツアーを終えられた率直な感想を。
いとうせいこう(以下SI):いつも打ち合わせ無しで、初見でしかも必ずみうらさんに新しいもの(スライド)を出してもらって、そこでその場限りのトークが始まるというスタイルでやっているので、そういうものをどういう理由でツアーにするって言ったのかもう忘れちゃったんですけど(笑)、よくみうらさんやったなぁ、と思って。えらいなぁ、凄いなぁ、と思いました。
みうらじゅん(以下MJ):よくやったよね。
SI:よくやった、ほんと、文句言わずに。全部でほぼ400枚。
MJ:400枚以上ですね、あの当時、般若心経もあるから、600枚くらいだ。よく俺文句言わずにやったよね。何か原因があったんだろうね(笑)。
SI:頑張りたかったんだよ、きっと。そういう気持ちがあったんだよね。みうらさんが準備期間に入っちゃうと、俺はもう助けられる事が何一つ無いので。もちろんオープニングの方の演出は俺やってるけど、そこさえ決ってしまえば、俺はやる事ないのから。だけどみうらさんにがんばってるかーって電話しても、頑張っている人に対して失礼じゃないかと(笑)、ね。で、俺は俺で悶々としてたよね。
MJ:あれは、頑張ってるというカテゴリーに入らないものでしょ。頑張って馬鹿なものを撮るので。
SI:ふざけてるよね。
MJ:頑張ってふざけてるんだよね。だから頑張ってたらダメなんだよ。
SI:ダメだねぇ。ま、難しいけど(笑)。
MJ:ふざけている人は頑張りが見えたらダメなんですよ、きっと。
SI:かといって頑張ってないものは面白くないし。ここ難しい所なんですよ。そこの所で(みうらさんが)悶々としているだろうなーと思うとこっちも悶々としてんだけど。始まる数日前の夜とかに、今どうしてんのかなぁ、きっとネタが無い、ネタが無いといってさ、目玉を飛び出させてさ(笑)、ぎょろぎょろ街を見てんだろうと。(笑)
MJ:意外とギョロ目だからね、俺(笑)。サングラスで隠れて見えないけど(笑)。
SI:あと地方公演に行った時に、「みうらさん、明日の事考えて眠れないんじゃないかなぁー」と、俺は俺で部屋でマジにじっと考えてるわけよ。
MJ:そんな時に、爆睡していたら悪いよね(笑)。
SI:爆睡だけは勘弁して欲しいね(笑)。
MJ:最近早く寝るようになっちゃってるから。
SI:マジに?(笑)
MJ:大半10時半か、11時に寝むっちゃってるね。
SI:いい加減にしてくださいよ、俺はもう眠れないんだからさ。(みうらさんが)がんばってるんなら、しょうがないから俺も朝まで頑張ろうとかやってんだぜ(笑)。
MJ:もうさ、地方に出ると家に戻れないので持っていった物しかないんだ。だから逆に言うと東京でやるライブは思いっきりがいいんだ。地方だとあとはもう朝行って、北海道とか、朝撮るしかないんだ。唯一出来るのはそれだけで。
SI:朝撮りね。朝取り野菜の朝撮り(笑)。
MJ:「宇多田ヌケル」なんて朝、名古屋で撮ったヤツだから(笑)。それぐらいしかやる事もないんで。がんばりようがないもんね、それがかえって良かったかもしれない地方は。自分の事務所に帰れば、もっと良いモノがあったんじゃないかっていつも思っちゃうんだけど、意外と無いんだよ、もう。
SI:もうみんな撮っちゃてるもんね、スライドに。
— 各地方で総て違うスライドで見せたということですが、かなり御苦労されたんじゃないでしょうか?
SI:そう、結局全公演、全部違うスライドを見せたよね。
MJ:同じものはバツしていったから使ってないですよ、一枚も。似たヤツもあったけど、よく見ると確度が違うから(笑)。
でも同じものが出てるんじゃないかと思ってチェックしに来ているヤツが絶対いるから(笑)、それだけでもワクワクしてもらえれば、もうそんなにおかしくなくてもいいかなと。
— 地方で特に印象的だった出来事は?
SI:印象に残ってるのは、福岡公演の時に二人でそれまでずっと楽屋にばっかり居てつまんなくなっちゃったんだよね。で、外に出ようって事でファッションビル見に行こうって。天神にイムズって所があって、イムズを見に行こうってことで歩き出したんだけど、「遠いです」って言われたんだけど、いいって歩き出したら、ファンの人が話しかけてきて。
MJ:見に来た人だったよね。それで車に乗せてもらって(笑)。
SI: イムズに行くっていったらまた「遠いですよ」って言われて(笑)。「乗っていきませんか?」っていうから「そうですか?」って乗ってったのが面白かったね。
MJ:きっとイベント見に来ていて、駐車場取ろうとしてたんだけど満員で取れなくて。たぶん俺達のせいで。でもあまりにもフランクな行為だったね。(笑)
SI:ふらふら行って平気で乗せてもらって、イムズ迄乗っけてもらって。
MJ:イムズ行ってその後、大丸行ってシュークリーム買って。
SI:2人でシュークリーム買って帰ってきた。
MJ:あ、エクレアだ(笑)。栗が入ったクリーミーエクレア。そんなもんをいい年のおやじが二人で買ってるのもね(笑)。
SI:小銭出しあってね。
MJ:なぜかあの時、エクレアが抜群に食べたかったんだ。
SI:エクレア・ブームだったんだよね、あの時。
MJ:小学校以来だもん、あんなブーム来たの。
SI:あ、そうなの?エクレア、エクレアってうるさかったもんね。それが一番俺達ぽくていいなと。スタッフに後で怒られたけど(笑)。そういう事はするもんじゃないって。
— 福岡以外のエピソードは?
MJ:それから今回ずっとビリー隊(今回のツアーでビリー・ザ・ブートキャンプのパロディをオープニングでやる黒人の方々)が全国一緒に回っていたから、全員ロケバスみたいのに乗って全員で地方に行くんだけど、ちょっとNew Yorkのすえた匂いがしていて(笑)。ずーっと国際的な匂いがしていたよね、あれ。
SI: 国際的なツアーをやっている感じはしたよね。あの人たちはビリーと全く関係ないけどね。米軍基地やボディーガード派遣会社で普段働いている人だから。でも地方での打ち上げにずっと出てくれたんだよね、彼ら。狭ーい所でやってたんだけど。ずっと俺ら今回「鍋縛り」で(打ち上げ)やってたから。全部各地の鍋が食いたいって事で。彼らいっつも狭ーいテーブルに大きな体で入って(笑)。食った事ないようなモツとか食ってんだよね。あれ可哀想だったなぁ。
MJ:名古屋は「塩ちゃんこ」だったね。
SI:「塩ちゃんこ」、美味かったね。
MJ:あれがナンバーワン。あとはビリー隊がチキンを食いたいって言ったからチキンがある所に行ったんだ。なんかチキンばっか食ってたよね、あの人たち。
— 最終公演の大阪を終えた瞬間の気持ちは?
MJ:気がついたらビリー隊に、USJに出ている人たちが3人出ていて、そいつらが誘ってないのにカラオケに来てずっと英語の歌を歌ってるから、打ち上げてないんだよね、実は(笑)。
SI:俺はもう真っ先に帰ってますから。おつかれ!って言って。
MJ:コーラ2本くらい飲んだらさっと帰ったよね。
SI:後の宴会はみうらさんにいつも任せてあるから。そしたらよく解んないんだけど、普通だったら照明さんとか音声さんとか労う所を、その日しか出ていない外人を労っちゃたんだ(笑)。
MJ:しかも10秒くらいしか出ていない外人を労ってんだよね、俺。カラオケ代も払って。
SI:全部の公演が終わった時は、ちょっとマラソンってこんな感じかなあ、と思ったかな。
MJ:ちょっと欽ちゃんな気持ちで。
SI:あれ?と思ったらたどり着いてるわゴールに。名残惜しい感じがしたね。
— もう2〜3公演やっても良いと。
MJ:ネタさえあればいくらでも出来るんだけどね。ネタの事だけなんだよね。トークは普通に出来るから。
SI:トークは問題ないから。それからいつもは一回限りなんだけど今回地方をやっているから打ち上げの鍋がとにかく嬉しくてしょうがないわけ(笑)。どんな味なんだろうと思いながら。今回その旅の楽しさはありましたね。
MJ:楽しかったね。飛び飛びだったけどね。
SI:多少もっといいツッコミあったかな、って思う事もあったけど、次あるからな、と思える事は凄い大事な事だなって思って。一発勝負だけじゃないから。
— スライドショーが12年で10回、続いてきましたが。
MJ:その間に地方は何回かやっているので、実はもっとやってるんですよね。 京都、福岡、小倉もやってるし。
SI:公式公演の数でいうと10回。ま、9.5で名乗ってるのもあるしね。10嫌さにね(笑)。引き延ばしというかね、ゴールに入る前にね。
— ところでスライドショーがスタートしたきっかけは。
MJ:はじめ大仏連というのやっていて、仏像のスライドをやっていたんだけれども、仏像のスライドじゃなくてもいいんじゃないかって事になって、でこういう形になったんだよね。
SI:面白ければいいんじゃないの、って話になって。
MJ:実は仏像のネタがなくなったんだよね。結構やったからね。
SI:確か俺が「新しいのないの?ネタ」って言い出したんじゃないの、多分。
MJ:で、仏像ショーなのに全然関係ない写真入れて。何やってんだよ、がおかしかったんで。
SI:それがウケたんだよね。
MJ:きっとそうだよね。












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